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おふくろの味、家庭料理の定番として大人気の肉じゃが。一説に寄ると、その肉じゃがは明治期の海軍軍人である、連合艦隊司令長官・東郷平八郎がルーツだったといいます。
ルーツとなった東郷平八郎が赴任した京都府舞鶴市と広島県呉市がともに「肉じゃが発祥の地」と名乗りを上げていますが、実はこの「東郷平八郎ルーツ説」はただの都市伝説、平たく言えば嘘の可能性も高いのです。
東郷平八郎と肉じゃがの関係性、そして「東郷平八郎ルーツ説」について真偽の程を探っていってみましょう。
Contents
肉じゃがの生みの親・東郷平八郎とは?
東郷平八郎は明治期の海軍軍人、日露戦争時の連合艦隊司令長官を務めました。日本海海戦の圧倒的勝利で勇名を馳せ、「アドミラル・トーゴー」として世界でも知られます。この東郷、青年期に約7年間のイギリス留学経験があります。「肉じゃが東郷平八郎ルーツ説」は、このイギリス留学が大いに関係しているのです。
東郷平八郎の逸話:海軍で肉じゃがのルーツとなった?
23歳でイギリスに留学した東郷は、当初留学を希望した王立海軍兵学校への入学を許されず、海軍予備校次いで商船学校で学びます。当時はまだ東洋人は珍しい時代で、当初はからかわれる事も多く、苦労したと言われています。が、年は若いが戊辰戦争に参加した歴戦の軍人である事を告げると廻りの反応は一変し、一躍英雄として扱われる事になったと言われています。
イギリス留学は東郷にとって辛い経験も勿論あったでしょうが、良い思い出として残った事も多かったのでは無いか?と推測されます。その一つが料理だったと思われます。
イギリスで食したビーフシチューをいたく気に入り、その味が忘れられなかった東郷。日本に帰国後、何とかしてこの味を再現したいと思い、料理長に「ビーフシチューというものがある。作れ」と無茶振りをします。
想像するに「イギリスで食したビーフシチューというものがいたく美味であった。材料は牛肉、じゃがいも、ニンジン。たまねぎも入っておったかな?色は茶色かったようじゃ。甘くもなく辛くもなく、深みのある味じゃった」などと注文をつけたのでしょう。
しかし、注文を受けた料理長はビーフシチューなんぞ食べた事はおろか、見た事もありません。「茶色いというぐらいなんじゃから、醤油と酒で煮込んだんじゃろ」とテキトー(!)に作り、「びーふしちゅーなる物を作ってみました」と東郷の前に出します。
「色はまぁ違うが、見た目は何やら似ておるようじゃな」と東郷。一口食べて、「うむ…ワシが食したビーフシチューとは全く違うが、これはこれで美味なものじゃな」という事で、この「ビーフシチューもどき」を艦内食として正式に採用します。
これが、肉じゃがのルーツになったという訳です。
「東郷平八郎が肉じゃがのルーツ」は嘘の可能性も…?
如何にも説得力のある「東郷ルーツ説」ですが、これには異論もあります。
ビーフシチューと同じようにデミグラスソースやトマトソースを使って煮込む料理にハヤシライスがありますが、このハヤシライス、実は明治2年には日本に存在していたという説があります。明治2年と言えば1869年。東郷がイギリス留学に出る前の話しです。
ハヤシライスとほぼ同時期の1871年、東京の洋食店「南海亭」のちらしに「シチウ(牛・鶏うまに)」という品書きが既に存在していた事が確認されてますし、1872年に発行された「西洋料理通」という本(作者・仮名垣魯文)にも肉とトマトを用いたシチューが紹介されています。
冒頭で述べたように舞鶴市と呉市が東郷ルーツ説を元に「肉じゃが発祥の地」を謡ってますが、東郷が舞鶴鎮守府長官として赴任したのは1901年。実はその前の1891年に海軍が制定した「五等厨夫教育規則」に「シチュウ仕方(シチューの作り方)」と書かれていた事も判明しています。
牛肉を醤油と砂糖で煮込むという手法は牛鍋やすき焼きの手法と似通っており、肉じゃがはそちらからヒントを得た料理では?というのが異論という訳ですね。
そう考えると、肉じゃがというのは東郷に無茶振りされた料理長が「まぁこんなもんじゃろ」とテキトー(!)に作ったものではなく、「肉だけだと栄養が行き渡らんじゃろうし、嵩も足らん。芋とたまねぎも入れてやったらどうじゃろか。彩りにニンジンも入れてあげた方がええじゃろ」という、むしろ料理長の慈愛に満ちた考えの元で産み出された料理なのかも知れませんね。
おわりに:東郷平八郎がルーツ(とも言われる)肉じゃが
肉じゃがのルーツにまつわる話し、如何でしたか?
ルーツはどうであれ、肉じゃがが市民権を得て代表的「おふくろの味」になっていることは事実です。使う肉も牛肉だったり豚肉だったり、糸こんにゃくを入れてみたりとそれぞれの家庭によってバリエーションが豊富なのも肉じゃがの特徴ですね。
明治以降に一般的に食されるようになった牛肉を上手くアレンジして代表的「おふくろの味」まで昇華させた明治期に料理人に感謝しつつ、今後も肉じゃがの味を大いに楽しんでいきましょう!